亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
左の道へ方向転換し、先を急いでいると……奥から、岩を砕く様な凄まじい破壊音が響き渡った。

モワッと、白い砂埃が廊下の奥から漂って来る。



―――誰かいる。


………いや、誰か……ではない。





……………あいつがいる。






―――オーウェンは駆けた。


既に火が点った蝋燭を何本も追い越し、その先へ。



………オーウェンは、いくつもの廊下と連結している小さな広間に出た。
立ち並ぶ扉のいくつかに、剣による深く長い傷が刻まれている。

………モウモウと立ち込める乳白色の空間。

………その中に、オーウェンは見た。








やけに艶のある長い金髪に、細身で長身のシルエット。
淡い光に青白く反射する、恐ろしく長い剣。

………なんだよ。こいつも………同じ左を選んだのか。



………こんなところまで、妙な縁だね。不思議なくらい。

オーウェンは槍を振るい、自嘲的な笑みを浮かべた。















(………どうやっても……開かない様だな………)

どんなに叩いても、両断しても、深い傷が刻まれるだけでびくともしない扉。
このまま真直ぐ進むよりも、脇の通路を通って行った方が謁見の間へ早く行けるのだが。

(………これも城の意思か……)

どうせこの城は消える運命なのだ。いくら破壊しようが関係無い。

ベルトークは先に進む事を決め、鞘に剣をおさめようとした。

……ピタリ、とその動きが止まる。





……背後から、なんとも鬱陶しい視線が絡み付いてくる。


「――…おい、サディスト!」


…………。


ベルトークは溜め息を吐きながら、振り返った。


………案の定、そこにいたのは、どうしても遭遇する宿命らしい、あの男だった。
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