亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~




一歩踏み出す度に、長い廊下の左右に並ぶ蝋燭が独りでに赤い火を点していく。


徐々に暗闇から薄暗がりが広がり、その度に、白い壁に散った血痕が目に付く。






(………こんな…お化け屋敷じゃなかったんだがな………)


………幼い頃から両親に連れられて、何度も何度も訪れ、大臣やメイドとすれ違ったこの廊下。



もっと明るくて、汚れ一つ無く純白さを主張していて………。


寂しく響き渡る足音。





…………ここは…忘れたい過去そのもの。


今自分は………過去にいるのだ。


オーウェンは廊下に点々とある扉に手を掛けた。

しかし、扉は開かない。

(………ここも駄目か)


殆どの部屋がそうだった。
二階へ通じる扉も、あの忌まわしい記憶しか無い大広間の扉も、何故か鍵が掛かっていて開かなかった。



………進める道は一階のみ。それはまるで……………あの謁見の間へと城自身が導いているかの様で…。



(……………不気味だな……)








しばらく進んでいると……道が二手に分かれていた。

どちらから行っても謁見の間へ辿り着けるが。




オーウェンは迷った末、左の道を選んだ。


こちらの道はいくつかの広間が途中途中にある。反対の右側は中庭を通る道だ。


誰がどちらに行ったのか分からないが、とにかく進む他無いだろう。


(………嬢ちゃんに会えれば良いんだがな…………早いとこ見つけねぇと………)



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