亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
最初に間合いを詰めてきたのはベルトークだった。

相変わらず衰えることを知らないその神速。
見極めるのにどれ程の歳月がかかったか。

瞬きした瞬間には斬られ、剣を鞘に納めた奴はいつの間にやら正面から後ろに移動している。

相手にした人間は開始一秒で戦闘不能を余儀無くされてしまう。




…………そんなの、真っ平御免だ。







瞬時に縦に構えた槍に、凄まじい衝撃がビリビリと走る。

目と鼻の先で、切れ長のエメラルドの瞳がこちらを睨んでいる。

押し合ったままガチガチと震える剣と槍。
弾かれた様に互いに離れると、間に火花が舞った。


「――っらああああああ!!」

自身の身の丈以上に長い槍を、頭上でグルグルと回転させた。
振り下ろされた槍の先を、ベルトークは剣で受け止め、逆に下に押さえ付けた。

そのまま撥ね除けようとした途端、足払いをする様に槍は弧を描いて旋回した。


軽く跳躍したベルトークに向かって槍先を構え、その胴体に向かって突いた。




…しかし、ベルトークは咄嗟に宙で身を捻り、鋭利な刃は彼の脇を通って空気を貫いた。

「遅いと言っているだろうが」

ベルトークは脇を通る槍を掴み、そのまま槍を伝って一気に間合いを詰め、剣の柄でオーウェンの喉を突いた。

「―――がっ……!!」

息が詰まる感覚。同時に、重い膝蹴りが顎にきた。

(………このっ………!)

後退しようとしたベルトークに、オーウェンは隙を突いて手を伸ばした。


「―――!?」

のけ反ったオーウェンに胸倉を掴まれた。

「――調子に乗んなああぁ!!」


耳を劈く大声と共に、ベルトークの身体はそのまま片手一本で投げ飛ばされた。
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