亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~




パラサイトは広範囲に枝を伸ばし、葉をつけ…………小さな蕾が現れたかと思うと、それらは一斉に開花した。

手の平位の小さな、真っ黒な花。空高く覆い茂る枝一面に黒い花弁が咲き渡り、雪の如くヒラヒラと地上に舞い降りてきた。




漆黒の、匂い立つ花の乱舞。視界を覆い尽くすその光景は、まさに幻想的だった。









「…………マリア…」

肩に舞い降りてきた花びらを見詰め、イブは悲しげに、彼女の名を呟いた。




甘ったるい花の匂い。………それに混じって、彼女の香りがする。








「………イブ、油断しちゃ駄目だよ。……………パラサイトはまだ成長を続けている」


惚けているイブに、ダリルは注意を促した。

事実、パラサイトの赤い枝は、まだ地表を這いずり回っていた。


蠢く影を見つけるや否や、素早く近寄ってその身体を貫いて回っている。

荒野の至る所から悲鳴に似た呻き声が聞こえてきた。


………今のパラサイトに、分別など全く無い。
生き物を捕まえてはその生命力を吸い取り、どんどん枝や根を伸ばしている。


…………荒野は今や、パラサイトの手中。

そこにいるもの全てが、蜘蛛の巣でもがく獲物となっていた。



「ぼーっとしてると…………食われるよ…………ほらっ……」

巨大な幹から数本の枝が生えた途端、遥か下にいるダリルに向かってビュッ、と伸びて来た。


瞬時に避けるが、枝は連続して突いて来る。一歩後退して避ける度に、太い枝が正面の足元にに深々と食い込んだ。



枝に貫かれた影や獣は、そのまま太い幹に吸い込まれていった。

転がる屍にも枝が伸び、ズルズル引き摺って同化させていく。


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