亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
鋭利な牙が並ぶ裂けた口が、枝を噛み千切っていく。
千切れて露わになった枝の断面から、異臭を放つ赤い液体と、金色の粉塵が溢れ出た。
液体がもろにかかった怪物の足が、ジワジワと焼け爛れていく。その生々しい傷口に、黄金の粉塵が纏わりつくや否や、爛れた皮膚から小さな芽がポツポツと生え始めた。
唸り声と共に、枝でがんじがらめにされた斧と盾を落とした。
ひび割れた蹄の隙間に容赦無く入り込み、肌を貫いて骨に沿って浸食していくたくさんの枝。
青白かった怪物の肌が、見る見る内に赤い、細かい線に覆われていく。
…………天に向かって伸びていく幹が、怪物の巨体を徐々に己が身体に引きずり込んでいった。
………怪物の身体を礎に、同化して、更に大きく成長する気なのだ。
丘の上の城をも追い越し、夜空に伸びた枝は、四方八方へと横に枝を伸ばしていく。
………濃い緑の葉が、伸びていく枝から一気に生える。
荒野全体を覆い尽くす様な、巨大な樹木。
既に半身を幹に取り込まれてしまった怪物は、腕を目茶苦茶に振り回し、爪で固い幹を削り、蹄で根を潰している。
しかし、いくら裂かれても潰されても、木はすぐに元通りになった。
潰された根が地中から顔を出し、暴れる怪物の胴体にある裂けた口にズルズルと入り込んでいく。
「…………凄い……」
突如現れた巨大な木を高く見上げて、リストは唖然としながら呟いた。
「………これが………………三大世界樹の一つ……………パラサイト………………」
古代、大地を司る神として崇められていた世界樹。
その姿はあまりにも……神々しい。