Distance

-3-

 リリィは夢を見ていた。

ーあぁ、またいつものやつ かー
リリィは海の深くを漂っている。
夢だと解っているが、息が苦しくなる。
夢だと解っているが、地上に出ようと手足をばたつかせてもがく。
もしかしたら、このまま目を覚ます事が出来ない気がして。

ーこれは、きっと13年前の船の事故の記憶なんだ。ー

そろそろ意識が飛びそうになる所で頭上から声が聞こえた

ーここに掴まれ!絶対に死ぬな!!ー

がばっと大きな手がリリィの方に向かってくる。
男の姿がこちらに向かってくるが姿はぼんやりしていて、大きな手のひらしか見えない。

ー.....っ!助け...てー

リリィは更に手を大きく掻いて、手の主に届くようにもがいた。

ー絶対に助ける....!ー

じわじわと二人の手が届くか届かないかのところで、リリィはハッと目を醒した。
息をきらして、呼吸をきらしていた。
額にはじんわりと汗が滲んでいた。

(誰の手...?誰かが私を助けてくれたの?)

いつもは溺れてもがき苦しむところだけで、目が醒めていたのに、今回の夢に見た事の無い
男の手があらわれた。

( おじいちゃんじゃない、男の人の声...)

時計を見ると夜の7時だった。
ベットで眠りについてから、30分程しか経過していなかった。

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