遠距離恋愛
一通り演奏が終わると、皆は更に大きな拍手をケータに浴びせた。


「どーも。」

やはりまだ皆に緊張しているケータは、いつもの『お調子者』といった態度を見せず、あくまで謙虚だった。


「いやぁ凄いよ!マジギターうまいね!俺も楽器やってるけど、だからこそ余計上手いのがわかる。」

ちなみに、カズはベーシスト。

彼は関心しているようだ。

「いろいろ対バンしてきたけど、ケータ君のギターは上手いよ、全然。すげぇ」

と付け加えていた。


「あたしも感動したぁ〜。噂通り上手だね。」

カナは、大きな目を更に大きくして喜んでいる。

「お姉ちゃん、いっつもケータ君のギターを自慢してるんだよ。だから聞けてよかった!ありがとう!」

サチコは嬉しそうに礼を言った。


ケータは皆から沢山褒められて「俺なんてたいしたこないって」と言いつつも、まんざらでも無い様子。


そんな騒ぎを、あたしは更に盛り上げたくて大声を出した。

「ケータは凄いんだから!今後有名になるんで!!サインなら今のうち〜」

と、調子に乗って駆け回っていた。



そんなあたしの足を遮るように声が飛んだ。

「ケータ君は、アメリカ行くんだろ?留学に行くの?語学留学?」
ヒロユキは「留学」の話題に触れてきた。


あたしは胸がチクッとした。

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