龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「『精一杯頑張る』って言ってみたけど、いったい何をどう頑張ればいいの?」

学食でお昼を食べながら、わたしは友達にぼやいた。


「何の話?」

隣のクラスなので今朝のいきさつを知らない悟くんが、怪訝そうに言った。


「バレンタインデーの話」

わたしの代わりに亜由美が答えた。

「志鶴って、今まで誰にもチョコあげた事ないの?」


「親父になら」


「ダメだこりゃ」

美幸がボソッと言う。


悪かったわね


「それに本当にチョコでいいの? 圭吾さん、甘い物はあまり好きじゃないわ」


「カカオ90パーセントチョコとか? 甘くないよ」

悟くんが言った。


「えーっ! あれ、ゲロまず」

美幸がまぜっ返す。


「何の話ですか?先輩方」

一年生の竜田川美月が、トレーを持ってやって来た。

「ここあいてますよね?」

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