龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「常盤さん自身が好きなわけじゃないのね」

「将来の代議士夫人って立場が好きなんだろ。常盤って奴だって、彼女よりも彼女の父親が好きなはずだよ。まあ、ある意味お似合いのカップルだね」


そんなの嫌だわ


「彼の言った通り、僕らは違う世界に住んでいるんだよ」

悟くんはわたしの手を取った。

「戻ろう。少なくとも、大野達は僕らの世界の住人だ」


そうね


「あとは、パッケージ買わなきゃ」

「チョコは?」

「チョコレートケーキを作るの。お手伝いさんに教えてもらって」

「へぇ、頑張るね」


何だか褒められたみたいで嬉しくて、わたしはその場でクルッと回ってみせた。


「だってね、圭吾さんが大好きなんだもの」


「はいはい」

悟くんは優しく微笑んだ。

「君は圭吾にはもったいないくらいの娘(こ)だよ。運のいい奴だ」


ううん

運がいいのはわたしの方よ

みんなの愛情に包まれているもの

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