君とこんぺいとう
思わぬ再会
淡々と仕事だけをこなす毎日。

そんな日々に変化が訪れたのは
初夏を感じる6月のことだった。

課長が一人の男性を連れて
出社してきたのだ。

「今日からうちの課に配属になった
里中くんだ。よろしくな」

課長の一言に
私は数日前に耳にした噂を思い出した。

(そう言えば、新しい人が入るって言ってたかも…)

無関心な私が仕事に戻ろうとした時だった。

「小川だよな?」

名前を呼ばれて反射的に振り返ると
さっき課長から紹介された「里中くん」が立っていた。

「そうですけど…」

私が首をかしげていると彼は言った。

「俺だよ。里中隼人。高校で同じクラスだったろ?」

まじまじと彼の顔を見た私は
とんでもなく驚いた。

「…里中って、あの里中?!だって全然背が…」

私の覚えている里中隼人は
身長165センチに童顔の男の子。

でも、目の前の「里中隼人」は
どうみても身長は180近い
整った顔立ちの大人の男だった。

「俺、高2で転校した後
かなり背が伸びたんだ。
お前と同じクラスだった高1のときより
10センチ以上は伸びたかな。驚いた?」

里中はそう言って笑った。
私は急に胸が苦しくなって下を向いた。

「そうなんだ。気付かなくてごめんね。
まさか同じ会社だなんて」

「俺、転職してきたんだ。
小川がこの会社だって知らなかったから俺も驚いた」

里中がまだ何か言おうとしたとき
課長が彼を呼んだ。

「あ、ごめん。
これから各部署に挨拶に行くんだ。
また後でな」

彼が横を通りすぎるとき
私の胸の中でかすかな音が響いた。

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