極上お姫様生活―2―【完】


弾かれたように顔を上げる。……今、抜け駆けしたの誰だ?






「櫻田君、」



「そんなの決まってるだろ。嫌いになんかなれない」





いつの間にか身を乗り出していた湊が蒼空を見つめる。ちょっと待て、おい。






「あたしのこと、許してくれるの……?」




「許すもなにも、蒼空に非があったわけじゃないだろう」





いつからお前は蒼空を下の名前で呼ぶようになったんだ?



今にも溢れ出してしまいそうな嫉妬心を必死で押さえつける。




「でも」




「もう何も言うな。俺たちだって蒼空のこと大切に想ってるから」





湊が優しく笑って蒼空の頭を撫でる。と、同時に蒼空の目からポロポロと涙が零れた。







「……っ、よかったあ……」




っ。


「どけ」






こんなの我慢できるわけないだろ。



俺は湊の肩を掴んで後ろに追いやる。そのまま少し震えてる蒼空をきつく抱き締めた。






「八木原く……っ」



「悪かった。もう二度と、こんな思いはさせねぇから」





なんて言葉を並べてみても伝わらない気がして、代わりに強く、ぎゅっと腕に力を込める。











「……えへへ、八木原君……あったかいです」




< 139 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop