極上お姫様生活―2―【完】
弾かれたように顔を上げる。……今、抜け駆けしたの誰だ?
「櫻田君、」
「そんなの決まってるだろ。嫌いになんかなれない」
いつの間にか身を乗り出していた湊が蒼空を見つめる。ちょっと待て、おい。
「あたしのこと、許してくれるの……?」
「許すもなにも、蒼空に非があったわけじゃないだろう」
いつからお前は蒼空を下の名前で呼ぶようになったんだ?
今にも溢れ出してしまいそうな嫉妬心を必死で押さえつける。
「でも」
「もう何も言うな。俺たちだって蒼空のこと大切に想ってるから」
湊が優しく笑って蒼空の頭を撫でる。と、同時に蒼空の目からポロポロと涙が零れた。
「……っ、よかったあ……」
っ。
「どけ」
こんなの我慢できるわけないだろ。
俺は湊の肩を掴んで後ろに追いやる。そのまま少し震えてる蒼空をきつく抱き締めた。
「八木原く……っ」
「悪かった。もう二度と、こんな思いはさせねぇから」
なんて言葉を並べてみても伝わらない気がして、代わりに強く、ぎゅっと腕に力を込める。
「……えへへ、八木原君……あったかいです」