極上お姫様生活―2―【完】
もしかして本当に聞こえなかったかなと心配して顔を上げる。八木原君の表情を伺う前に唇を押し付けられた。
微かな隙間から吐息が漏れる。
苦しくてどんどんと胸を叩くと、少しだけ唇を離される。
「ん……っは、は……」
「悪い、予想外の破棄力でちょっと興奮しすぎた」
生理的な涙を流すあたしの目尻に、ちゅっと舐めるようにキスを落とす。その顔に余裕はなかった。
愛おしそうな眼差しで見つめられて、トクンと胸が高鳴る。
「嬉しすぎて顔がにやけちまう。なぁ、もっと俺だけを感じて?……愛してる」
そんな事を言われたらこっちだって顔がにやける。あたしはそれを隠そうとせず、むしろ見せつけるように彼の首に腕を回した。
「あたしも愛してますっ……斎」
何度も角度を変えられて啄むように重なる甘い唇。
斎、と心の中で名前を呼べば、それに応えるように口付けが深くなっていく。
誰もいない静まり返った夜道であたしの吐息だけが聞こえる。頭の芯まで痺れるような甘い感覚に、あたしは夢中で溺れていった。