屋上で
「まず、千春たちが交際宣言したとする」
私があまりに分からないという表情を浮かべたためか、彼はまず1つと言うように人差し指を一本真っ直ぐ伸ばし話し始めた。
うんうんと私は相槌をうつ。それについてはつい先日屋上で話したばかりだ。
そして、と彼は続け、中指を立て2の形を作る。
「クラスの風上狙いの女子はもちろん、学年を越えて広まったら先輩までが千春を目の敵にする」
確かに…冷時は学年問わずモテているみたいだ。何人も知らない人に告白されているのを見た。
「風上が守ってくれると思う?
彼が四六時中一緒なわけないだろ?部活の時や帰り道、ぴったりと千春たちは一緒なの?
しかも相手は多人数で彼はたった一人だ。
守りきれる訳がない。
現実はそんなに甘くないんだよ」
…分かってる。
昔からそんなこと分かってた。
口を塞がれ人目のない路地裏や物置部屋に連れて行かれれば誰にも助けてもらえない。助けてくれない。
すでに嫌という程経験してきた。
守ってもらえるなんて思ってない。
「だから、俺の出番なんだ」
はい?