屋上で


「――――風上があまりに浮かれてるから、俺が悪ふざけしただけだよ」



「だが、あの時教室で…」



「あのキスはただの演技で本当にしたわけじゃないんだ」



「じゃあ…」




「嫌われてなんかないよ。
でも、しっかり掴んでないと今度は俺以外の誰かに本当に横取りされるよ?」




「……誰が手離すか」




この時、俺は気づいた。
コレは持田が仕組んだ罠だって。



口ではああ言ってるが、コレはきっと千春をイジメから――…




ということは、だ。



そこで思考が停止する。




「絶対千春は渡さねーからな」




千春は渡さない。

持田がたとえ俺と同じ気持ちだとしても。

というより、千春も俺が好きなら何でコイツに貸しを作るようなマネをしたんだ。教室のキスはたまたま運良く未遂でも、それでアイツに俺に黙って1日デートとかねだられたらどうする気だ。




…この鈍感さは本当にどうにかしないといけない。




あぁ、考えるだけでイライラしてきた。
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