今夜、俺のトナリで眠りなよ
「憧れちゃいねえな。だが不真面目でいることに、俺の場合、意義があるんだ」

「意味がよくわからないんだけど」

「俺、弟だろ? 上に兄貴がいる。その兄貴より、デキるヤツって思われたら、いろいろと大変なことになるから。だから俺は兄貴より不真面目でいなくちゃいけねえんだ」

「そういう必要はないんじゃない? 兄弟なんだし」

「血の繋がった仲の良い兄弟なら、また違ってくるんだろうよ。俺は愛人の子だから。死んだ親父のおかげで、本宅の養子になっているだけ。だから義母や兄貴から見たら、俺は邪魔者なんだ。いつか親父の会社を乗っ取るんじゃないかって、毎日冷や冷やしてんだ。だから俺は、俺の身を守るために、不真面目でいるんだ。馬鹿な人間でいれば、あの二人は安心するだろ?」

「そういうもの?」

「そういうもの。今、あの二人には俺は、兄嫁を奪おうとしている馬鹿な男としか見られてない。大学にも行かず、兄嫁を奪おうとしている世間知らずで恩知らずな愚弟だってね」

 私は洗濯かごを落とすと、「え?」と目を見開いた。

 なんで?

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