【短編】こんなものいらない
あたしが否定するような言葉を言わなかったから、慶太は大きくため息をついた。
「聞いたの?」
「う、うん…」
あたしがそう言うと、慶太は何も言わなくなった。
それから一息ついて、口を開く。
「…ご注文、お伺いいたします」
「あ……。う、うん」
呆れた?
しつこいと思った?
浮かれていたあたしは馬鹿だったんだろうか。
声を落として注文のメニューを伝える。
「コーヒーと、あと、このケーキお願いします」
「かしこまりました」
そう言って、慶太はオーダーを閉じる。
なんか、一層気まずくなった気がする。
そう思って軽く俯いた。
俯いていたから、慶太の表情はわからない。
だけど想像して、ため息をついた。
その瞬間、何かが耳元に近づいてきて、熱を感じる。
「今日早めに上がるから、適当になんか食って待ってて」
ボソリと息混じりに呟かれた。
いなくなったと思っていた慶太が、あたしの耳元で笑っていた。