【短編】こんなものいらない
「…ごめんな、いろいろ」
「え?」
慶太が小さく呟く。
目線は前を向いたまま。
あたしは唐突な言葉に、その場に合わない素っ頓狂な声をあげた。
「いや、だから…。かまってやれなくてさ」
元々呟く様だった声が、更に小さくなっていく。
慶太には申し訳ないと思いつつ、あたしはそれを見て嬉しくなる。
前みたいに、向き合って話せていること、わかりあおうと慶太が頑張ってくれてることが。
「でも、あたしのためだったんでしょ?」
「まあ…」
「じゃあ、許す。嬉しいもん」
「えー、良いの?」
あたしがあっさり許したことに慶太は驚いた様子で、顔を軽くあたしの方へ向ける。
「ふふ、良いよ。元に戻れて良かった」
あたしが堪えきれず笑みを見せて言うと、慶太は照れながら前を見直した。
顔は隠せていても、耳は真っ赤だ。
あたしはそれを見て余計嬉しくなる。