【短編】こんなものいらない
 
 
「…ごめんな、いろいろ」

「え?」

 
 
慶太が小さく呟く。

目線は前を向いたまま。

 
あたしは唐突な言葉に、その場に合わない素っ頓狂な声をあげた。

 

「いや、だから…。かまってやれなくてさ」


元々呟く様だった声が、更に小さくなっていく。


慶太には申し訳ないと思いつつ、あたしはそれを見て嬉しくなる。

前みたいに、向き合って話せていること、わかりあおうと慶太が頑張ってくれてることが。
 
 

「でも、あたしのためだったんでしょ?」

「まあ…」

「じゃあ、許す。嬉しいもん」

「えー、良いの?」


 
あたしがあっさり許したことに慶太は驚いた様子で、顔を軽くあたしの方へ向ける。

 

「ふふ、良いよ。元に戻れて良かった」

 
あたしが堪えきれず笑みを見せて言うと、慶太は照れながら前を見直した。

顔は隠せていても、耳は真っ赤だ。

あたしはそれを見て余計嬉しくなる。

 
< 25 / 31 >

この作品をシェア

pagetop