【短編】こんなものいらない
 
 
 
「…そういえば、由美と仁にどこまで聞いたの?」

 
信号が赤になり、車が停車する。

慶太はハンドルを握りながらあたしを見てそう尋ねた。

 
 
「どこまで…」


どこまでか、と言われれば。

慶太があたしの為にバイトに明け暮れている。

あたしにはわからないけれど、もうすぐ大切な日。

そのくらいだ。


だけど正直に言えばそれ以上教えてくれないと思って、嘘をつく。


 
「…全部聞いたよー」

「まじで?!」

「う、うん」

「うわー、なんだよあいつら!俺、指輪の事だけは言うなっていったのに!」


 
ここまで来て、聞きなれない単語が耳に入る。

いや、聞きなれていても、あたしにはまだ縁の無いものだと思っていた。

 
 
「…指輪?」

< 26 / 31 >

この作品をシェア

pagetop