【短編】こんなものいらない
わけがわからなくてそう聞き返すと、慶太も同じ顔をする。
「え?うん…。え、聞いたんでしょ?」
「あ、その…」
今更、嘘ですとは言えなくて、俯きがちになる。
「もしかして、聞いてない…」
「うん、ごめん…。でも」
言いかけると、突然車の後ろからクラクションが鳴る。
ふと前を見ると、信号は青に変わっていた。
驚いて、慶太は急いでアクセルを踏み、車を走らせる。
落着きを取り戻すと、慶太は大きく息を吸って、吐いた。
「ま、バレちゃったもんはしょうがないか」
困ったように笑って言う。
あたしの拍動は、次第に速さを増していった。
「なんつーか、いつも記念日とかサプライズで飯食って終りだったじゃん。だから、ちゃんとしたものあげたかったっつーか…」
「ちゃんと…」
「ほら、お前俺が金ないの知ってて、あれ欲しいとかこれ欲しいとか言わなかったし」
「だから…指輪?」
「ま、まあ、うん…」