今までの自分にサヨナラを
だけど、一つだけ見えたものに、また恥ずかしさが込み上げてくる。
彼の耳も赤くなっていたからだ。
たった三文字の名前を呼ぶのに、一体どれだけのエネルギーを使うんだろう――。
大事な人の名前を呼ぶことがこんなに難しいなんて知らなかった。
こんな注文、もう受けられない。
恥ずかしさで頬も指先も燃えそうで、おかしくなる――。
「そっ、それより――!」
私は何故か無鉄砲に声を張っていた。
今の状況を打開したい一心で。
でも、その後に続ける言葉など見つけてあるわけもなく、驚いた彼の視線が刺さって痛い。
私は焦って言葉を探しながら、部屋を見渡した――。