今までの自分にサヨナラを
「……ねぇ、何でないの?」
ただ話題を変えようとしただけなのに、重苦しく沈みそうな声が出てしまう。
どうしてもこの部屋を見ていると、さみしくなるんだ。
本棚に行儀よく並んだ教科書も、男の子らしい色でコーディネートされた部屋全体も、ありきたりで彼がどこにも見えない。
「絵は、もう描かないの……?」
語尾が消え入りそうになる。
私なんかが口を出すことではないけれど、殺風景な壁を見ていたら言わずにはいられなかった。
私には、何にもない真っ白な壁が、キャンバスにしか見えなかったから。
そう、そのキャンバスが、使われずに嘆いているようにしか見えなかったのだ。