今までの自分にサヨナラを


「たまには描くよ」


彼の声は、当たり前のように澄んで明るい。


だけど、私はすぐ隣にいる彼の、一瞬の表情を見てしまったのだ。


苦しそうに眉を寄せて笑顔がなくなる瞬間を。


それはまるで、太陽が陰りを見せるように……。


「だけど、俺はこのラーメン屋を継ぐからさ」


そう言って、彼は得意げに私に笑いかける。


でも、いつもの太陽なんかじゃなかった。


厚い雲がかかったみたいにあたたかさがない。


壁という名のキャンバスは責めるように白く光って、彼の陰った太陽が泣き出しそうだった。



< 185 / 326 >

この作品をシェア

pagetop