今までの自分にサヨナラを
「たまには描くよ」
彼の声は、当たり前のように澄んで明るい。
だけど、私はすぐ隣にいる彼の、一瞬の表情を見てしまったのだ。
苦しそうに眉を寄せて笑顔がなくなる瞬間を。
それはまるで、太陽が陰りを見せるように……。
「だけど、俺はこのラーメン屋を継ぐからさ」
そう言って、彼は得意げに私に笑いかける。
でも、いつもの太陽なんかじゃなかった。
厚い雲がかかったみたいにあたたかさがない。
壁という名のキャンバスは責めるように白く光って、彼の陰った太陽が泣き出しそうだった。