今までの自分にサヨナラを


お母さんの厳しい顔が、思い出したくもないのにうかぶ。


瞳から溢れだした涙は、一度通った道を辿って音もなくテーブルを濡らした。


「お母さんがわかんない……。わかろうともしてくれないなんて」


涙が流れれば流れるほど、心が闇にのまれていく。


信じていたから、味方だと思っていたからこそ、お母さんに裏切られた気分になる。


そうやって誰かを責めないと、私が壊れそうなんだ。


「そんな風に言っちゃダメだよ。さゆのこと、一番に想ってる人なんだから。俺なら頑張るから――」


また涙が溢れかえる。


彼の透明な綺麗な声に、自分の心の汚さが見えた気がした。



< 214 / 326 >

この作品をシェア

pagetop