今までの自分にサヨナラを
私には夢なんて存在しない――。
「ねぇ、さゆりんはもう書かないの、小説は」
すると、茜ちゃんのゆっくりとした問い掛けが耳に流れ込んでくる。
……小説。
あの人にも言われたな……。
昔の私の夢。
風が吹けば容易に消えてしまうような、たかが燈ほどの理想。
「――まだ小学生だったよね。あったかい話で私、好きだった。さゆりんの優しさがつまってるんだもん」
私は無言で茜ちゃんから目を逸らした。
茜ちゃんの優しい言葉は苦味にかわって私の胸を支配する。
私にはもう“夢”を紡ぐことができないんだから。