ヘタレ王子とヤンキー姫
恵美に渡されたお弁当箱はひとつだけだった。

「今日からは、お母さんの作った夕飯食べるんでしょ?」

颯太は、樺音も朝は何も渡さなかった事を思い出した。

颯太自信は、学校で話そうと思っていたが、二人はもう気づいていた。

「ありがとな恵美。」

「お昼はどうする?」

「昨日母さんにも同じこと聞かれて、恵美や樺音に世話になってたこと話したんだ。」

「それで?」

「二人に迷惑かけたから、今度からは自分が作るって、けど今さら恥ずかしくてさ…。」

「親子なんだから、恥ずかしがることないと思うけど?」

「そう言われると思って素直に甘えることにした。」

恥ずかしそうにうつむく颯太を見て、恵美は微笑んだ。

「よかったね。仲直りできて」
「ホント、お前らのお陰だ」

二人はお互いに笑いあった。

“マザコン”とからかう恵美に“うっせぇ”と返しながらも否定しない颯太は、ほんとは両親が大好きなのかもしれないと、恵美は思った。
< 56 / 200 >

この作品をシェア

pagetop