ふわふわ
 その日は、タクと待ち合わせしていた。
 土曜日の夜。
 雪が降りそうに寒い日だった。
 私はファッションビルの前でタクを待っていた。

 デートは、いつもお決まりのコース。居酒屋で飲んで、タクの家へ行って泊まる。繁華街まで出てくることは最近では珍しくなっていたので、私には久しぶりの街だった。
 ここまで出てきたんだったら、家の近所にはない、オシャレなイタリアンでも行きたいなぁ……。でも、タクはそういうの好きじゃないしなぁ……。

 空を見上げる。
 あ、雪が……降ってきた。今日が初雪だった。じゃあ、今日のデートは初雪デートだね、なんて。

 携帯が鳴った。
 コートのポケットの中で握り締めていたので、マナーモードの振動でわかった。タクからのメールだ。
「友達と飲みに行くことになった。明日埋め合わせするからごめん!」

 何を思う間もなかった。

 携帯の画面から目を上げたら、彼の顔が視界に飛び込んできたのだ。
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