会いたい
「じゃ、ここは当人同士で落ち着いてお話でも」
「そうですわね。私達お邪魔虫は少し退散しときましょう」
唖然としているうちに、話はそこまでいっていて、私達はいきなり二人きりになってしまった。
何ともいたたまれず、私は目の前のコーヒーカップに視線を落とした。
が、いい歳をした25の女が、しかも人とかかわることを前提とした音楽講師をやっていながら、なんの会話もできないとは、と思い、なるべく自然に顔を上げた。
目の前のお見合い相手は、そんな私をずっと見ていたらしい。
少してれたように、笑って頭をかいた。
「――気を使っているのが、見え見えの手ですね」
その笑みが何とも爽やかなものだったので私も自然に笑い返した。
「そうですね。でも、テレビなんかじゃいつもそうですよ。これが当たり前ってところですか」