会いたい
他愛のないおしゃべり。
幽霊以外と、こんなにたくさん話したのは久しぶりだった。
趣味や特技にはじまる自己紹介を終えて、私と高木さんはたくさんの話をした。本当にたくさんの話を。
釣書もろくにみなかった失礼な私は、高木さんが医者だということも初めて知った。研修医であることも。不勉強な私は研修医がどういうものかもいまいちわかっていなかったが、それさえも丁寧に教えてくれる。
会話がつまらなかったのではない。
高木さんの研修時の失敗談やら怪奇談やら、会話はおもしろいものばかりだった。
学校の先生になってもいいくらい、話上手だった。
「――じゃ、じゃあ、高木さんも、見たんですか?」
「まあ、それらしいのは、何度か。その時はさすがに、独りで夜中にトイレに行く気にはなりませんでしたね。とにかく考えないようにしました。あれは気のせいだ、気のせいだって自分に言い聞かせて。今でも霊安室の近くは、昼でも走って通り抜けます」
「でしょうね」
高木さんの話し方は気さくなもので、かといって馴々しい感じもなく馴染みやすいものだった。話題が途切れて気まずくなることもなく、私も気楽に色々なことを聞いたり、本当に楽しかった。
楽しいと、思っていた。