会いたい

「――返事は今でなくてもいいです。また、連絡します」

 鈍い痛みを抱えたまま、私はタクシーに乗り込んだ。

「――ごめんなさい。ごめんなさい」

 私はそれしか言えなかった。

「帰ってすぐに薬飲んで寝たほうがいいですよ。食欲ないなら無理して食べなくてもいいんで。水分だけはとってください」

 ドアが閉まる。
 高木さんはタクシーが角を曲がって見えなくなるまで、そこに立って手を振っていてくれた。
 私は体を後ろへ向けたまま、ずっとそれを見ていた。
 長年の目標を達成したような、そんな晴れ晴れした顔を、高木さんはしていた。

 それに比べて、私はなんて惨めな、情けない顔をしているのだろうか。

 しばらくしてから、私は向き直り、そのまま黙っていた。

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