会いたい

「――」

 流れる景色に眼がついていかない。
 私は眼を閉じた。
 何も考えたくない。
 このまま眠ってしまいたかった。
 こんな気分は、前にも感じたことがある――あれは、透が死んでしまったと聞かされたあの時に似ている。
 考えてはいけない。
 何も考えてはいけない。思い出したくないことばかり、考えてしまいそう。
 考えてはいけない。
 何も、何も――

「着きましたよ」

 不意にかかる言葉。

「!?」

 目を開けると同時に車が止まった。
 見慣れた風景。
 実家の前だった。

 「すみません」

 反射的に、私は言っていた。
 たぶんこんな時に、独りでいたくなかったからだろう。

「この先、もう少し行ってください」


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