会いたい

「あそこのレストランのランチに行ったら、先生着物着て男の人と一緒にいたからすぐわかったわよぉ」

 狭い地域だ。何かあったら誰かにすぐ気づかれる。
 内心の動揺を隠して私は笑った。

「やだ、見られちゃってたんですか。母親が会ってみろってうるさくて。今どきお見合いだなんて母親のレトロな感覚に付き合うのもつかれますよー」

「いいじゃないの。相手の人、チラッと見たけど、すごくいい人そうじゃない。何やってる人なのよ。教師にはいないタイプだったわね」

「なんと、お医者さんですよ、お医者さん」

「やだ、大当たりじゃない。あたしもお医者さんとコンパしたーい。今度頼んでみて」

「先生、旦那さんが聞いたらおこりますよ」

「そこは内緒よ」

 そこで、チャイムが鳴る。

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