会いたい

 私の思い起せる透はいつも笑っている。
 透はいつも、優しい感情しか見せてくれなかった。
 だからいなくなってさえ、こんなに優しく想い返せるのだ。

 もしも、もっとどろどろした感情や、人間らしい怒りや、汚らしいところを見せてくれていたら、私は透を忘れられたかも知れない。

 大人になって、綺麗ごとだけじゃない生き方を自分も学んだ。
 それでも、付き合っていたころ、世間知らずな甘ったれの大学生の私から見ても、どこか浮世離れしていた透と同じような生き方をしている人を、私は見たことがない。
 そして、これからも見ることはないだろう。

「優しい、人でした――」

 この三年、何度も思い返した懐かしい人。
 私にとって、誰よりも大事な人。

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