会いたい

 一瞬私は別の、どこか知らない空間に入りこんだような気がした。

 強い、何か引きつけるような視えない力があった。
 そしてその中心に、彼はいた。
 日常には有り得ない、何か、そんな、特別な存在。
 初めて幽霊を見た私は、心から納得した。
 だから、恐怖よりも先にこの特別な存在に目を奪われた。

「――」

 後ろの壁をかすかに透かして、私をじっと見ていた。
 テレビで見るのと違って、その幽霊は透けてはいるけれど、ちゃんと全身があった。
 優しそうな顔。
 襟足の少しのびた髪。
 見たこともない、知らない幽霊。

「ちがう……とおるじゃない……」

 それまで歓喜に輝いていたと思われる私の顔は、幽霊が哀しげになるくらい急激に、落胆の表情に変わっていった。

「……」

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