会いたい

「……待ってる人が、来ないから?」

 私の問いに、彼は哀しそうに首を振った。自信がなさそうに、それでも首を振った。

く る

「――」
 扉の向こうを見つめ、彼は言葉を綴る。

か な ら ず  く る

 まるで哀しみがその姿を消してしまうみたいに、幽霊は儚げだった。
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