ふたりの練習曲 ~Raita side~
「・・・ギリギリ・・・間に合ったか?」
「うん、大丈夫だと思う・・・」
息を切らせながらステージそでへつながる扉をくぐると、部員たちが譜面台を並べたり、演奏の準備をしていた。
椅子と譜面台の狭い隙間をぬって、サックスのパートの椅子に彼女を降ろすと、パートリーダーの御園先輩が近付いてきた。
「由佳っ、どーしたの?」
「あっ、由香利・・・
ちょっとドジしちゃった・・・」
御園先輩はテナーサックスを演奏している2年生で、美人なうえにソロもこなすもんだから、吹奏楽部内のアイドルみたいな人だ。
部外や他の学校にもファンがいるって聞いたけど、ちょっとすました感じが俺はニガテだ。