伯爵と妖精~新しい息吹~
「最近リディアが冷たいんだ」
えぇ!と驚き席を立ったポール。
「いつもティル、アテネって…、どうすれば僕のこと考えてくれるかな?」
ただの嫉妬と気づいたポールは座り直した。
「リディアさんも初めての子供で可愛いんですよ」
必死にエドガーを励ました。
「ほ、ほら。押してダメなら引いてみてろって言うじゃないですか」
笑って見せたら急にエドガーが立ち上がった。
「そうか!恋愛に疎い君でもいいこと言うじゃないか」
そう言うと急いでクラブを出て行った。
ポールは言ってはいけない事を言った気がした。


数日後、
イブニングドレスに着替えていたリディアがため息をついた。
「奥様、どうかなされたのです?」
侍女のケリーが心配そうに見つめる。
「たいしたことじゃ無いの…。エドガーが最近帰りが遅いし…」
朝もキスをしない、とは言えなかった。
「旦那様に伝えて置きますわ」
にっこり微笑みリディアを励ました。

ディナーを一人で食べ、一人で寝室にいた。
「やっぱり…、何かおかしいわ」
時計を見たら12時を過ぎていた。
一人ぼっちのベットは、エドガーがプリンスになって闇組織に侵入していった事を思い出させる。
「早く帰ってきて…」
そう呟きながら眠りについた。

エドガーがクラブに一人座っていたら、歌姫がやって来た。
「あら、アシェンバート伯爵。ずいぶんお久しぶりですわね」
豊満な体を寄せ、エドガーの隣に座った。
「若君がお産まれになったそうで」
あぁ、と曖昧に答えた。
「こんな所で遊んでていいのかしら?」
歌姫は微笑みながらエドガーの手に指を絡ませた。
「そうだね、だから今日は帰るよ」
あっさり歌姫の指を解いた。

馬車の中でレイヴンが見つめてきた。
「レイヴン、言いたいことがあるならはっきり言うんだよ」
少し黙ったが、
「エドガー様、毎日遅くまで遊んでいてらリディアさんが心配します」
エドガーは口を歪めた。
「それが目的なんだよ」
「目的…ですか」
少し理解不能なのだろう、レイヴンは黙った。


夕べも遅くエドガーは帰ってきた。
いつもと変わらない朝食なのにエドガーは黙っている。
「あの…エドガー、夕べは遅くまでどこに行っていたの?」
「ちょっとね」
軽い返事ですまされ、リディアはカチンときた。
「ちょっとねじゃないわよ!私たち夫婦なのよ」
ティルやアテネが産まれてからエドガーの態度が冷たくなった。
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