ありのままの、あなたが欲しい。
「おい、皆まだ帰らないでくれ!」
突然、武田さんが事務所に走り込んできて声を上げた。
急いでいるようなその様子に、何があったのかと事務所内にいた皆が怪訝そうな顔で武田さんを見やる。
「利用者が一人脱走したらしい」
──脱走…!?
俺は武田さんの言葉に目を見開いた。
いや、俺だけじゃない。
皆がはっとして、一瞬事務所内は静寂に包まれた。
「ついさっき、作業してここに帰ってきた時目を離した隙にいなくなったらしい。
まだそんなに遠くには行ってないはずだから、皆で捜そう!」
そう言って再び外へ出ていく武田さんを見て、俺らは我に返って立ち上がった。