聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
 細められた黒斗の目が、とても冷たく、暗かったから……。


 あたしはその純粋な恐怖に恐れおののき何も言えなかった。


 男への恐怖とも、幽霊とかに感じる恐怖とも違う。

 それは生きている人間のみが持つ、闇――。


 怖い……。


 黒斗の冷たい指先が、あたしの顎を捕らえた。

 そのまま親指の腹であたしの唇をなぞり、ダークな笑顔で「クッ……」と笑う。


「高志にキスされてたな?」

「……見て、たの?」

 恥ずかしいとか、そういう感情は一切持たず、ただ驚く。


「見てたぜ? お前、抵抗もしなかったよな? あいつの事好きなのか?」

「っ違う!!」

 抵抗出来なかったのは、不意打ちと高志の優しさのためだ。
 好きだとか、そういう感情なんて無い。

 第一そういう感情を感じる余裕も無かった。



 だというのに、黒斗は意地の悪い笑みで「へぇ……」と低く囁く。

「好きでもない男に、あれだけ必死に守ってきたファーストキスやっちゃうんだ?」

「だからそれも違――」

 あたしの言葉は、黒斗の口付けによって喉の奥に押しやられた。


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