死が二人を分かつまで
金子は無邪気に微笑みつつ言葉を繋いだ。

彼は津田の同僚である。

年はだいぶ下であるが。


今年の春に新卒で数多くのスターを輩出して来た芸能事務所であるここ、「タグチプロダクション」に社員として入社して来た。

そして適性を見極める1ヶ月の基礎研修のあと、津田のいるタレントのマネジメントをする部署へと配属されたのだった。


身長176センチの津田が見上げるほどの長身で、昨今流行りの細身のスーツを見にまとい、少し長めの黒髪を無造作にアレンジしている。


いかにも「オシャレな今時の若者」という感じで、まだまだあどけなさの残る顔に比例するように、おつむの方もまだあどけなかった。


事務所に入ってすでに半年経とうとしているが、先輩の補助ばかりで重要な仕事は任されておらず、ほとんど雑用係と化していた。


まぁそもそも、芸能事務所のマネージャーという仕事自体が雑用係みたいなものであったが。


「どれ」


そんな事を心の片隅で考えつつ、津田はパソコン画面を見るために金子の背後に回り込んだ。


それに促されるように、金子が当該メールを開く。
< 10 / 254 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop