死が二人を分かつまで
ロビーの自動ドア付近に佇む警備員の前を足早に通りすぎ、津田昌哉はそのまま一直線に受付へと向かった。
「お帰りなさい」
カウンターの中から女性がにこやかに声をかけてくる。
「お疲れ。俺あてに来客あった?」
「いえ。現時点ではどなたもお見えになっていませんけど」
「あそう。15時に、太陽広告の近藤さんが打ち合わせに来て下さるから。会議室にお通ししといて」
「かしこまりました」
受付嬢の返事が終わらないうちに津田は歩き出し、エレベーターに乗り込んだ。
2階で降り、ちょうど正面に位置する部屋のドアを開けて中に入る。
「お帰りなさい」「お疲れ様」という声がポツポツと上がる。
室内には20ほどのデスクが並んでいるが、外出している者がほとんどであまり人数はいなかった。
それだけ仕事が忙しいという証なのだから、喜ばしい事である。
「あ、津田さん。また届いてたみたいですよ~」
自分のデスクに腰掛けようとした時、部屋の奥に置いてあるテーブルでパソコン操作をしていた金子薫に声をかけられた。
「何が?」
「一般人からのメールですよ。ほら、例の、駅前で歌ってるっていう子の」