死が二人を分かつまで
「……すみません」


女性は聞こえよがしにブツブツと呟きながら乱暴にドアを閉めた。


「まったくもうっ。さっきから入れ替わり立ち替わり、何なのよ!」


進藤は呆然となりながらひとまず店に戻った。


「な?いなかっただろ?」


進藤の姿を見るやいなや、マスターが苦虫を噛み潰したような顔で言葉を発する。


「まさかこんな仕うちをされるとは思ってもみなかったよ。妹みたいに可愛がって来たのにさ」


「店はどうしましょうか?」


バーテンダーがおずおずとマスターに問いかけた。


「やるに決まってんだろ。ここは【ピアノバー】なんだから。丸山さんがいれば営業は成り立つんだからな」


開店時間はとっくに過ぎている。


なかなか看板の明かりが点かないので、きっと店の前で常連客がいぶかしく思っていることだろう。


皆、急いで準備を進めた。


ロッカールームに行こうと歩き出した進藤に、マスターがチラリと意味ありげな眼差しを向けつつ呟く。


「学生にも、何も言わずに行っちまったんだな……」


数日前の修羅場を思い出しての発言だろう。
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