死が二人を分かつまで
「他の演奏家見つけようかとも思ったけど、なんかもうやる気失くしちまってさ。それに、丸山さんと小夜ちゃんみたいなゴールデンコンビ見ちゃったら、もう妥協はできないよ」


最後の給料を受け取りに店に行くと、マスターは淋しそうにそう呟いた。


その時にはもうすでに店は営業停止していた。


進藤と交替で皿洗いをしていた二人のバイト仲間も来ていたので、成り行きで途中まで一緒に帰ることとなった。


その道すがら、一人が発言する。


「俺さ、丸山さんと小夜子さんて、な~んかあやしいと思ってたんだよな」


「あ、オレも思った」


もう一人も興奮したように同意した。


進藤の鼓動は跳ね上がる。


実は彼もそう感じていたからだ。


「二人共いきなり辞めるなんておかしいもんな」


「で、でも、小夜子さんが辞めたのは、もう2ヶ月以上も前ですよ。それに、丸山さんは田舎に帰るって……」


二人の意見に、進藤はついムキになって反論してしまう。


「だから、同時に辞めるとバレバレだから、きっとタイミングをずらしたんだよ」
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