死が二人を分かつまで
彼は事もなげに言い放った。


「田舎に帰るなんてのは真っ赤な嘘で、もっと条件の良い店に二人で引き抜かれたんじゃねぇの?」


それではやはり小夜子は丸山に心変わりし、彼と再出発する為に店を辞めたというのだろうか?


確かに二人は良いムードではあったが、それはお互いの才能を認め合っての、いわば戦友のような関係だと、進藤は無理矢理自分に言い聞かせていたのだが。


「でも、丸山さんて確か、40過ぎてますよね?小夜子さんより15以上も歳上ですよ?」


進藤は負けずに続けた。


「男と女が付き合うのに歳の差なんか関係ねぇよ。つーか、ウチの親父とお袋だって12歳離れてるし。しかも丸山さんはあんだけ小綺麗で全然オヤジくさくないし、すげー似合いの二人だったじゃん」


それを言われてしまうと、進藤にはもう返す言葉がなかった。


6歳も年下の頼りない学生なんかより、多少歳が離れていても、丸山のように落ち着いた大人の男性の方が恋愛対象としては相応しいだろう。


もやもやしながらも、その時の進藤には、それを確かめる術はなかった。
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