死が二人を分かつまで
「違うよ。姉貴のせいじゃないよ。他に、好きな奴ができたんだってさ」

『そう……』


明美はしばらく考え込んでから続けた。


『でも、それで良かったんだよ。あの人、だいぶ年上でしょう?』

「24歳だよ」

『あの人とあんたじゃ、どう考えても釣り合わないよ。あんたには、年下の可愛い子の方がお似合いだよ。同じ世界に住んでて、お互いに成長していけるようなさ』


何故かその言葉は、明美が自分自身に言い聞かせているように聞こえた。


やはり自分の行動を後ろめたく思っていたらしい。


明美との通話を終え、受話器を置いたあと進藤は心の中で囁いた。


『でも俺は、あなたが今でも好きだよ、小夜子さん』


しばらくして、丸山もプリズムを辞めてしまった。


田舎で一人暮しの母親が病に倒れ、傍にいてあげたいからと実家に帰る事になったのだ。


肝心のピアニストがいなくてはピアノバーとしては成り立たない。


それでなくても小夜子がいなくなって店の売上は激減していた。


マスターは店を畳むことを余儀なくされた。
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