死が二人を分かつまで
上司のミスを開けっ広げに笑う訳にはいかないが、かといって無視するのも失礼だし……。という葛藤の末のリアクションだろう。


しかし進藤にとっては、そんな事はどうでも良かった。


津田のあの台詞はそれでなくても強烈な一言だというのに、ふとした場面で度々思い出すものだから、サブリミナル効果を発揮してますます進藤を悩ませていた。


『あいつ、まさか俺に暗示をかける為にあんなこと言ったんじゃないだろうな？』


一人で勝手に焦りつつ、どうにかこうにか仕事をこなしているうちに、昼休みとなった。


社員食堂に移動して日替わりランチを食していると、進藤のスーツの内ポケットに入れてある携帯電話がふいに震えた。


急いで取り出し、ディスプレイを見た彼は、思わず含んでいた味噌汁を吹き出しそうになる。


「……はい、進藤です」

『あ、お忙しいところ申し訳ないです。僕、小谷なんですが……』

「ああ、うん。番号登録してあるから分かるよ。どうしたの？」


進藤は何とか平静を装いつつ答えた。


『今、お話しても大丈夫でしょうか？』
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