死が二人を分かつまで
知子はいつもの、弱気な自分が顔を出しそうになるのを必死に押さえ込んだ。
もう、逃げてはいけないと思いながら。
「東京です」
夫の目を見て、背筋を伸ばして答える。
「津田さんに、さとしちゃんの事をきちんとお願いして来ました。……母親として、当然の事ですから」
広は無言だった。
しばらく緊張する時間が続いたが、彼はおもむろに立ち上がると、おっくうそうに歩を進め、戸口に立ちすくむ知子の側へと近付いて来た。
「あなた…?」
「言っただろ。頭が痛いんだ。もう休む」
その言葉に、知子は拍子抜けした。
「あ、待って下さい。今お薬を……」
「名刺」
広と入れ違いに、タンスの上の救急箱を取るべく部屋の奥へと歩き出した知子を、引き留めるように広はポツリと呟いた。
「え?」
前を向いたまま、知子と視線を合わす事もなく、広は不機嫌そうな声音で続ける。
「津田とかいう奴の名刺、ちゃんと保管しておけ。お前はだらしがないんだから…」
もう、逃げてはいけないと思いながら。
「東京です」
夫の目を見て、背筋を伸ばして答える。
「津田さんに、さとしちゃんの事をきちんとお願いして来ました。……母親として、当然の事ですから」
広は無言だった。
しばらく緊張する時間が続いたが、彼はおもむろに立ち上がると、おっくうそうに歩を進め、戸口に立ちすくむ知子の側へと近付いて来た。
「あなた…?」
「言っただろ。頭が痛いんだ。もう休む」
その言葉に、知子は拍子抜けした。
「あ、待って下さい。今お薬を……」
「名刺」
広と入れ違いに、タンスの上の救急箱を取るべく部屋の奥へと歩き出した知子を、引き留めるように広はポツリと呟いた。
「え?」
前を向いたまま、知子と視線を合わす事もなく、広は不機嫌そうな声音で続ける。
「津田とかいう奴の名刺、ちゃんと保管しておけ。お前はだらしがないんだから…」