死が二人を分かつまで
姉と弟


一日の仕事を終え、アパートにたどり着いた進藤は、ドアの前に佇む人物を見て目を丸くした。


「姉貴!」


「あ、健一!も~、遅いじゃないのー!」


「どうしたんだよ」


「どうしたじゃないでしょうが。お盆も正月も全然帰って来ないし、ついこないだも電話したのに出やしないんだもの。みんな心配してたのよ」


その言葉で数日前、姉から近況を尋ねる電話があった事を思い出した。


留守電に残されたメッセージを聞く限り口調は普通だったし、さほど重要な用件に思えなかったのでひとまず手が空いた時間にメールで返信しておいたのだが。


「色々と忙しかったんだよ。……ていうか、それでわざわざ?」


「ま、それだけじゃないけどね」


明美は悪戯っぽく笑うと、足元に置いてあった大きめの紙袋を持ち上げて見せた。


有名デパートのロゴが印字されている。


「何だ。観光のついでかよ」


「私だってたまには息抜きしたいもの~」


いつまでもそこで立ち話をしていても仕方ない。


進藤はとりあえずドアを開けて明美に中に入るよう促した。


靴を脱ぎ、スリッパを履き、リビングへと向かう間、明美はずっとしゃべり通しだった。
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