死が二人を分かつまで
「情報番組なんかでさ、よく東京のお店の特集やってるじゃない。あー、あそこ行きたいな~。あー、あれ美味しそう~。なんて考えてたら我慢できなくなっちゃって、そんであんたの偵察を兼ねて遊びに来たって訳」


明美は「あの天下の○○ホテルに一泊しちゃうんだから」と得意げに言いつつソファーの傍らに荷物を置き、ドサッと倒れ込むように腰掛けた。


進藤は苦笑しながらキッチンへと向かう。


リビングとはカウンターで仕切られているだけなので、進藤の動きを目で追いかけつつ明美は会話を続けた。


「あー、でも、楽しかったな~。東京に遊びに来たのなんて何年ぶりだろう」


「でも、時々は家族で旅行に行ったりもしてたんだろ?」


「子どもが夏休みとかで、なおかつ店が休みの時にね。のんびり何泊もできないから強行軍であちこち見て回る羽目になって、羽を伸ばすどころかかえって疲れちゃったわよ」


明美はため息を吐きつつ続けた。


「つーか、ようするに、一人で自由気ままに旅行なんかできなかったって事。独身のあんたには分かんないだろうけど」


進藤は、姉の言葉に少し胸が痛くなる。


結果的に、店も両親の世話も明美に任せきりにしてしまっているからだ。
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