死が二人を分かつまで
芽生えた疑惑


「君があの小谷くん!?わ~、感激だ~!!」


約束通り、事務所を訪れたさとしを田口社長に紹介し、挨拶を済ませ、その後建物内を一通り案内してから津田は自分の部署まで連れて来た。


そこで待ち構えていた金子が、さとしを見るなり興奮しながら言葉を発する。


「あ、オレ、金子といいます!『金太郎』の『金』と『聖徳太子』の『子』で金子です!」


「何だかややこしい自己紹介だな、おい。『金』と『子どもの子』で良いだろ」


津田は思わずツッコミを入れた。


しかし、さとしはニコニコと楽しそうに金子を見ている。


「どうでも良いけど、書類用意できてねぇじゃねーか。早く持って来いよ」


「あ、ハイ!」


津田に促され、金子は壁際にある鉄庫まで慌てて飛んで行く。


あんなミーハーな奴にタレントのマネージャーなんかやらせて大丈夫なのだろうか?と、津田はこっそりため息をついた。


その間にさとしを部屋の奥に誘導し、長机の前に腰掛けさせる。


「これが【エントリーシート】になります。タグチプロダクションに所属していただく際に、必ず皆さんに記入していただいてます」
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