死が二人を分かつまで
芸能人の激務は世間一般に知られている事だが、それをサポートするマネージャーの苦労にもスポットライトを当ててもらいたいものだ、と津田は思っている。


タレントには数多くのファンが付いていてそれが励みになるが、マネージャーに熱い声援を送ってくれる者などいない。


若い時は2日くらいの徹夜なら気合いで乗り切ったものだが、今はとてもそんな無茶はできなかった。


やはり、寄る年波には勝てないという事か。


一瞬煙草が吸いたくなったが、その為には喫煙ルームに行かなければならず、それは今の津田には大変な労力である。


それよりも睡眠を取る事の方が優先と考えた。


「ただいまで~す」


ちょうどその時、金子がタレントの送迎を終えて自分のデスクに戻って来た。


「おい、金子!ちょっと仮眠するわ。1時間後に起こしてくれや」


衝立越しに声をかける。


「え?あ、はい。分かりました。あ、そうだ津田さん」


「何だよ」


「夕方、小谷君がエントリーシートを持って来ましたよ」


言いながら近付いているのか、徐々に明瞭になる金子の声。


そして間を置かず、彼がヒョイと衝立の陰から顔を覗かせ、A4の茶封筒を差し出して来た。
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